...音機
コトバツムギ オトツムギ

 落ちる。
 コトバが落ちる。
 ひとつ、ひとつ。落ちる。
 落ちた。
 
 またひとつ。
 もうひとつ。落ちた。
 落ちた。
 
 白い少女が、なぞる。
 コトバが、落ちる。
 細い指が、なぞる。
 コトバが、落ちる。
 
 ただ音も無く、落ちていく。
 少女がコトバを唱えるたびに。
 少女がコトバを歌うたびに。
 
 時には強く。時には弱く。
 時には優しく。時には厳しく。
 
 喜怒哀楽。あらゆるココロ。
 支離滅裂。あらゆるコトバ。
 
 少女がコトバを唱えるたびに。
 コトバは少女の指を伝う。
 されるがままに落ちていく。
 落ちていく。落ちていく。
 深く。深く。もっと、深く。
 
 少女はコトバを支配した。
 少しずつ赤く染まり、やがて埋まる。
 赤いコトバで埋めていく。
 コトバは踊る。仲間を見つけて手をつなぐ。
 紡がれる。コトバは紡がれる。
 
 コトバは一本の糸になる。
 コトバは赤い糸になる。
 少女はコトバを紡いでいた。
 少女は、言葉を紡いでいた。
 
 ♪
 
 溶ける。
 オトが溶ける。
 心にオトが溶けていく。
 体にオトが溶けていく。
 
 黒い人形が音を溶かす。
 歯車が軋む。糸が跳ねる。油が燃える。
 そのたびオトは空気を伝う。
 そのたびオトは心を伝う。
 
 ひとつひとつはただのオト。
 軋み跳ね燃ゆただのオト。
 
 時には楽しく。時には軽く。時には哀しく。
 
 人形はココロを鳴らして、オトを心に溶かしている。
 オトは機械の体を伝う。
 されるがままに溶けていく。
 溶けていく。溶けていく。
 
 人形はオトを支配した。
 風は少しずつオトに彩られ、やがて広がる。
 風は色づきココロを持った。
 人形を離れ次の場所を探す。
 風はまた別の風と溶け合い、違うオトを生み出した。
 オトは溶け合い、混ざり、紡がれる。
 オトは紡がれる。
 
 オトは一本の糸になる。
 オトは透明な糸になる。
 人形はオトを紡いでいた。
 
 ♪
 
 少女が棒を振る。
 棒が風を集める。
 人形が風を編む。
 
 風に溶けたオトは編みこまれる。
 やがて五本の線となる。
 オトが外に飛び出した。
 風は指揮に従う。音楽となって流れる。
 少女が歌う。オトに合わせて少女が歌う。
 紡いだコトバが歌となる。
 また新しいオトになる。
 
 それは。コトバと溶け合い紡がれた歌。
 それは。オトと溶け合い紡がれた歌。
 
 広がっていく。
 広がっていく。
 
 ――コトバツムギ、オトツムギ。
 
音機 - コトバツムギ オトツムギ
 
↑top

+/TexT...
 001.音機
 002.僕と
 003.コトバツムギ オトツムギ
 004.また、いつか。
 005.Epilogue*Prologue
 006.月の民の話
 007.あるひとびとのにっき
 008.「おやすみ」
 009.それから
 010.母
 
 INDEX
Copyright(C) Moo all rights reserved.