...音機
それから

 音機は眠っていた。
 
 主を失ったオルゴール。動くことのない鉄の塊。
 
 日の光の当たらない小さな地下室。
 ただ静かに眠っていた。
 音機は待っていた。自分を迎えに来る次の主を。
 
 孤独な部屋で響くのは心臓の音。
 無音であるはずの部屋で唄う心の音。
 機械の身体に埋め込まれた時計の音。
 針が時を刻む。針が心を刻む。針が記憶を刻む。
 
 それは音機の刻む音。
 音機が主と刻んだ音。
 音機が主と歩んだ音。
 音機が主と憶えた音。
 それは主と刻む音。
 
 音機は夢を見た。
 主と旅する夢を見た。
 自分が生まれて世界を見る夢。
 世界を巡って唄う夢。
 小さな少女に唄う夢。
 
 音機は夢を見た。
 主と旅する夢を見た。
 自分が目覚めて世界を見る夢。
 世界を巡って救う夢。
 小さな少女と唄う夢。
 
 音機は知る。
 自分の使命を。自分の運命を。
 音機は待つ。
 扉の向こうから現れる主を。自分と共に歩む主を。
 
 扉が開く。鉄の身体に指揮棒が触れる。
 それは次の夢。音機が世界と共に見る夢。
 
 また、はじまる。
 
音機 - それから
 
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+/TexT...
 001.音機
 002.僕と
 003.コトバツムギ オトツムギ
 004.また、いつか。
 005.Epilogue*Prologue
 006.月の民の話
 007.あるひとびとのにっき
 008.「おやすみ」
 009.それから
 010.母
 
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